鬼部長に溺愛されてます
密かに残る温もり
何度訪れてもため息に際限がない場所、それがミオリの住むマンションだ。
低層ならではの重厚感は通る人が思わず足を止めて見入るほどで、近代的な美術館の様相を呈している。
エントランスから中へ入れば手入れの行き届いた中庭がガラス越しに見え、壁やフロアには大理石や御影石がふんだんに使われており、贅沢の限りを尽くした造りだ。
内装の美しさはもちろんのこと、ミオリの部屋は3LDKでひとり暮らしでは持て余してしまう広さ。
私と同じ会社に勤めるOLとは決して思えないのだけど、彼女の父親は会社を経営しているらしく子供の頃からなに不自由なく過ごしてきたそうだ。
本当に羨ましいのひと言に尽きる。
大きな窓が開放感たっぷりの豪華なリビングへ私を案内してくれたミオリは、昨夜言っていたように器にいっぱいのイチゴをのせてきてくれた。
大きい上に真っ赤だ。
「おいしそう」
「でしょう? 昨夜、誠吾とも食べたんだけどものすごく甘かったよ。まだたくさんあるからいっぱい食べてね」
「嬉しいな」
ミオリはイチゴと一緒に、入れてくれた紅茶もテーブルへと置いた。