鬼部長に溺愛されてます

「だって安全路線を進むのなら、社内の出会いだけじゃ足りないじゃない。麻耶は私みたいに社内恋愛をするつもりはないでしょ?」

「……それはまぁそうだけど」

「付き合う付き合わないは別としても、一度会うくらいはいいんじゃないかな」


ミオリが私の目を覗き込むようにして首を傾げる。

彼女によると、その二次会というのが午後五時から【ル・シェルブル】という高級ホテルのイタリアンレストランを貸し切って行われるらしい。


「ね、どう? 行ってみようよ」


よくよく聞いてみれば、ミオリがそこまで言うのには実は理由があった。私に男の人を紹介したいというのは建前で、誠吾に女の子が近づかないように見張りたいのだそうだ。
もちろん私の恋のことを心配してくれているのは事実だけれど、優先順位から言ったらそっちが上だ。


「でも私、こんな格好だよ?」


ネイビーのムートンコートにニットとホワイトパンツ、足元はスニーカーだ。
結婚式の二次会に行けるコーディネートではない。

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