鬼部長に溺愛されてます
ミオリと誠吾が立ち上がる。
行っちゃうの……?
初対面の人と急にふたりきりにされても困る!
心細さからミオリのドレスを掴んだものの、彼女は「楽しんでね」とまったく取り合ってくれない。ふたり揃って嬉しそうに手なんて振って、会場の中に消えてしまった。
ミオリたちが歩いていった方にいつまでも目を向けていると、間中さんがチョンチョンと私の肩先をつつく。
「麻耶ちゃん、って呼んでもいいのかな」
「あ……はい、大丈夫です」
「俺のことも好きなように呼んでくれてかまわないから。ファーストネームの方が嬉しいけどね」
そう言って間中さんが笑うけれど、私はぎこちない笑みしか浮かべられない。
手持無沙汰にグラスをクルクルとさせながら、この後はどうしたらいいんだろうと思いをめぐらせていた。
桐島部長、昨夜はあの後大丈夫だったのかな。
ちゃんと家に帰れたかな。
こうして男の人を紹介されても、考えるのは桐島部長のことばかり。これじゃ間中さんにも失礼だ。付き合う気もないのに会うべきではなかったのかもしれない。