鬼部長に溺愛されてます
「あの、間中さん――」
「外に出ようか」
帰りますと言おうとしたタイミングで、間中さんが突然立ち上がる。
私からグラスを取り上げて通りがかったウエイターに預けると、私の手を握って立たせた。
「あの、出るって……?」
「ここはちょっと騒がしいから、静かな場所でゆっくり話をしたい」
「でも……」
手を外そうと試みたものの、一向に引き抜けない。踏ん張った足も彼の力に太刀打ちはできなかった。
あっという間に店の外まで足を進め、エレベーターの前へと私たちはやってきてしまった。
「どこへ行くんですか?」
「ふたりだけで話せるところ。なんだか麻耶ちゃんが緊張して話せないみたいだからさ」
間中さんの言葉になぜか嫌な予感を覚える。
そしてそれは、間中さんが乗場ボタンの“上”を押したときに確かなものになった。