鬼部長に溺愛されてます
「ありません。このホテル自体初めてきました」
「そうか。ならきっと気に入ると思うぞ」
どこか嬉しそうに言う部長とエレベーターに乗り込んだ。
そしてその部長の言葉どおり、私はそのラウンジに入った途端息を飲まざるを得なかった。そこには都内が一望できる夜景が広がっていたのだ。
全面大きな窓になったカウンター席からは、壮大な景色が臨める。ピアノの生演奏もあり、特別感が半端ない。
言葉も発せなくなった私のかわりに、桐島部長はオレンジブロッサムを注文してくれた。
それが運ばれてくるまで、散りばめられた色とりどりの光に私はただただ見入っていた。
「気に入ったようだな」
「はい、綺麗すぎて言葉もないです。部長はよくここへ来られるんですか?」
そう聞いてから、もしかしたら女性連れできているかもしれないと思い当たって、その答えを待つほんの数秒間に緊張が走る。
「たまにひとりで」