鬼部長に溺愛されてます
予想した最悪の答えじゃなかったことにホッとして、思わず自分でも驚くほど大きな息を吐いてしまった。
それを見た桐島部長が「具合でも悪いのか?」と大真面目に私の顔を覗き込む。
「い、いえ……。部長こそ大丈夫なんですか?」
「ああ、平気だ。昨夜は迷惑をかけたな」
「お忙しいのはわかりますが、あまり無理はしないでくださいね」
たまたま私が一緒だったからよかったけれど、部長がひとりのときに倒れたりしたら大変だ。
ふと、桐島部長の横顔に柔らかな笑みが浮かぶ。
出し抜けに見せられた笑顔が私の心を弾ませる。
「これで何度目だろうな……」
「……はい?」
“これで何度目”って、いったいなにが?
桐島部長の言っていることの意味がわからず聞き返すと、彼は「いや、なんでもない」とグラスに口をつけた。
なんだか誤魔化されたような感じだ。