鬼部長に溺愛されてます
「ところで、部長はどうしてさっきあそこにいたんですか?」
「高校時代の友人の結婚式がここであったんだ」
そう言われて改めて部長の格好を見てみれば、確かにいつもとは違ってドレッシーなスーツを着ていた。
光沢のあるシルバーグレーのスーツはいつにも増して部長のカッコ良さに磨きがかかっていて、遅ればせながらドキッとさせられる。
「水原は?」
「あ、私も……私もそうです。友人の結婚式の二次会で……」
直接の友人じゃないことをいちいち説明する必要もないだろうと、そう答えた。
「今日はメガネじゃないんですね」
「“人事部長”じゃないからな」
クスッと笑いながら桐島部長が言う。
でもその言葉がきっかけで、私は大事なことを思い出してしまった。
どこかで誰かが私たちがふたりでいるところを見たら大変なことになる。
そわそわと店内を見渡したところ見知った顔はないものの、心配は拭いきれない。