鬼部長に溺愛されてます

それだけでも驚いたのに、目を向けた窓の外は真っ暗。夜を迎えていたのだ。
意識を失くしたのは午前中だったはずだから、何時間も眠っていたことになる。

これは後で聞いたことだけれど、桐島部長が私を抱きかかえて医務室へ運んでくれた上、救急車にも同乗してくれたらしかった。
研修のこともあっていったんは会社に戻ったものの、終わってすぐに駆けつけてくれたらしい。
そればかりか、念のため一泊の入院となった私を翌日は迎えにまできてくれたのだ。

厳しい人でしかなかった桐島部長は、その日以来私の中で本当は優しい人だという印象に変わってしまった。

とはいえ、冷めた態度を取るばかりの桐島部長とふたりきりの部屋は、嬉しさよりも居心地の悪さが上回ってしまう。
心細さに次第に膝が震えはじめた。

ミオリ、早く来てくれないかな……。

緊迫する空気の中、プロジェクターの電源を入れてロールスクリーンを下ろす。あとはサイドテーブルを動かしてくれば完了だ。

桐島部長の冷たい視線を感じつつ、年季の入った木製サイドテーブルをズルズルと引きずる。

早く終わらせて、ここから出たい。
それなのに焦る気持ちとは逆に、テーブルがなかなか定位置まで進んでくれない。
キャスターでも付いていれば楽なのにと思ったが、付いていないのだからどうしようもない。

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