鬼部長に溺愛されてます

◇◇◇

その日の夜、私はミオリと誠吾の三人で会社から遠く離れた居酒屋にきていた。
一昨日はオレンジブロッサム二杯で眠ってしまったくらいなのに、強いお酒を飲んでみても全然酔えない。どんどん空いていくグラスとは対照的に、私の心は重い鉛に埋め尽くされていく。

あの写真のことも部長の態度の豹変ぶりも、どうしたらいいのかまったくわからない。


「それにしても驚いた」


ざわめく店内で、誠吾とミオリが揃って何度も同じセリフを吐く。

桐島部長に片想いしていることを思い切って白状したのだ。
それだけではない。メールで送りつけられた写真の夜のできごとも、部屋に連れ込もうとした間中さんから私を助けてくれたのが部長だったことも暴露するしかなかった。


「あの冷徹非道な桐島部長のどこがいいんだか」


誠吾が呆れたように呟くものだから、ミオリが私を気遣って彼を軽く睨んだ。

でも、普段の部長しか見ていない人ならば、きわめて当然の意見だろう。そんな一面しか知らなければ、私だってきっと好きにはならなかったと思う。

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