鬼部長に溺愛されてます

中谷マネジャーは意に介する様子もない。
それがどうしたという開き直った態度だ。

次の言葉を用意していなくて、私は勢いを失ってしまった。でもここで負けてはいられないと、もう一度気持ちを奮い立たせる。


「会社のみんなに訂正してください。あれは間違いだって」

「事実がどうかなんてことには興味がないんだ。桐島さんが失態をやらかしたことが俺には重要でね」


人事部長の椅子を狙っていると言った、ミオリの言葉は本当だったんだ。

彼のひどい仕打ちに私の苛立ちが募っていく。事実と違うことを突きつけて、人の足を引っ張るような真似は許せない。
ふつふつと怒りが湧きあがる。


「恥ずかしくないんですか?」

「元をたどれば、あの桐島さんがやり始めたことだよ。社内恋愛しているくらいで異動させるなんてね。でも可笑しいよな、その罠に自分ではまってるんだから」


クククと嫌な笑いを洩らしたと思ったら、中谷マネジャーは豪快に笑いだした。

……なんて人なの。
その姿に狂気的なものを感じて、膝の上でスカートをギュッと握り締めた。

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