鬼部長に溺愛されてます
――カタン。
不意に玄関から物音がしたような気がした。
いきなり響いてきた荒々しい足音に振り返ると、なぜかそこに桐島部長の姿があった。
「水原!」
上半身下着姿の私を見てギョッとした後、部長は自分のジャケットを素早く脱いで私に掛けてくれた。
「部長……どうしてここへ?」
「如月から連絡をもらったんだ」
ミオリから……?
部長に会えた安心感から、緊張の糸が切れてその場に座り込んだ。
「いったいどういうつもりだ」
私を背中に隠すようにして部長が立ちはだかり詰め寄ると、中谷マネジャーは「王子様のお出ましですか」と馬鹿にするような口ぶりで嘲った。
「ふざけるのもたいがいにしておくんだな」
「それはこっちのセリフですよ。せっかく彼女が助けようとしてくれていたのに。これで部長の椅子を失ったのも同然ですね」