鬼部長に溺愛されてます

桐島部長に見られているという緊張から、無理な角度でテーブルを持ち上げたそのとき。

――痛っ!

指先に感じた痛みに、慌てて手を離した。
その手を見てみれば、人差し指には小さな棘が刺さっている。

こんなときにどうして……!

少しだけ飛び出ている棘の先端を掴もうとしても、爪が滑って思うようにいかない。
地味な痛みが煩わしくて、思わずムキになって棘と格闘してしまう。ところが取れそうで取れない棘は、どんどん奥へと突き刺さっていくばかり。


「なにをしているんだ」


苛立ったような桐島部長の声に、肩がビクンと揺れる。


「――すみません! すぐにやります!」


指先の痛みと桐島部長の痛い視線、今取るべきなのがどちらなのかは考えなくてもわかる。痛む指をかばいながら、再びサイドテーブルをズルズルと動かした。

ミオリはどうしたんだろう。
早く応援に来てくれないと、この空間が重苦しくてたまらない。

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