鬼部長に溺愛されてます

「どういうこと?」

「本当はね、あの異動、当初は部長じゃなくて麻耶の名前だったらしいの」

「え……」

「メールの差出人が麻耶だったことも関係したのね。社内にあんな写真をばらまいた責任を取ってもらうみたいな。部長がそれを社長に直談判したらしいの。自分が異動するから彼女は残してほしいって」


どうしてそこまでして、一事務員を守るようなことを……?

入社三年目の私なんて、風が吹けば飛ぶような薄っぺらな存在。桐島部長の代わりは他にいないけれど、事務員の代わりなんて他にいくらでもいるのに。


「それとこれは内示らしいんだけど、例の中谷マネジャーも飛ばされるみたい」

「中谷マネジャーも?」

「彼の作戦は失敗だよ。あれを送ったのが彼だってことが社長の耳にも入ったの」


それなら社内恋愛はなかったのだから桐島部長だって異動する理由がなくなるのに、どうして部長はすんなりと受け入れてしまったんだろう。
すべては誤解で中谷マネジャーの仕業だったと判明すれば、そんな異動をなくすことができたはずなのに……。

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