鬼部長に溺愛されてます
◇◇◇
部長のマンションへとタクシーを飛ばした。
エレベーターを待つのももどかしくて七階まで階段を一気に駆け上がり、息を切らせたままインターフォンを押す。
ドアを開けられるまでのほんのちょっとした時間さえ待ちきれなくて、部長が顔を出してくれたときには、抱きついてしまうほどの勢いで前へと飛びだした。
「水原……どうしたんだ?」
部長が驚いて目を見張る。
呼吸を整えないと話せなくて、私は派手に肩を上下させて胸を押さえた。
「俺に任せろなんて……そんなこと言っておいて、どうして部長が異動させられるんですか」
「とにかく入れ」
近所迷惑も顧みず、つい大声で問い詰めてしまう私を宥めすかすように部長は中へと招き入れた。
靴を脱いで上がるように言われ、部長の後をついて広い部屋の中へ足を踏み入れる。
天井に届くほど積み上げられた段ボールを見て、本当に会社からいなくなってしまうことを実感して寂しさが込み上げた。
「あれは誤解だって、どうして社長に言わなかったんですか? 私とはなんでもないって」