鬼部長に溺愛されてます

社長は竹之内だ。


「カモフラージュのために母方の姓を名乗っている」


父親が会社を経営していることは聞かされていたけれど、まさかうちだったなんて……。
開いた口が塞がらない。

三年近くも気づかなかった。
私が入社する半年前に突然できた規則に、そんな理由があったとは。

私が誠吾との関係がばれないように気をつけてと言ったときに、ミオリが『私は大丈夫』と言っていた訳も今ようやくわかった。


「でも社長の指示なら、部長の異動はなおさらおかしいじゃないですか。しかも誤解なのに」

「誤解だとは言いきれない」


照れを隠すように笑うから、余計にその真意がつかめない。


「……どういう意味ですか?」

「社内恋愛中とでも言うか。……いや、未遂か」


部長にそんな人が……いたの?

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