鬼部長に溺愛されてます
「えっ……?」
思いがけないことを言われて頭の中が混乱する。
こっちにくるなんて、ひと言も聞いていない。スマホを取り出して確認したけれど、電話が入った形跡もメッセージも入っていなかった。
「どこにいたの?」
テーブルに身を乗りだすと、誠吾は「流通戦略部」と席次表に目を落としながら答えた。
「私、先に行くね」
ふたりの返事を待たずに社員食堂から引き上げる。
来るなら来るって、教えてくれたっていいのに。そんな不満から唇が自然と尖る。
前回会ったのは、もう一ヶ月も前のことだ。
それも夕食を一緒に食べただけ。
よくよく考えてみると好きなのは私ばかりで、桐島さんはそこまで私のことを好きなわけじゃないと思えて仕方がない。
入社したときから変わらずに、今も片想いと同じだ。
本社にくることを教えてくれなかったのは、私に会う必要がなかったからなのかもしれない。