鬼部長に溺愛されてます
桐島さんは私に会えなくても全然平気で、黙々と仕事をこなして、早く本社に戻ることだけを考えているのかも。
そんなことをぼんやりと考えながら流通戦略部へ向かって歩いていると、いきなり肩口を掴まれ、近くのミーティングルームへ強引に連れ込まれてしまった。
あまりに突然すぎて声も出せなかった。
「――桐島さん!?」
それが探していた彼本人だったものだから、つい声が大きくなる。
桐島さんは「しっ!」と私の唇に人差し指をあてると、通路に面した窓ガラスに素早くブラインドを下ろし、外部からの視線をシャットアウトしてしまった。
「久しぶりだな」
「……『久しぶりだな』じゃないです」
桐島さんの口真似をして抗議すると、彼が目を細めて笑う。
「いつきたんですか? どうして教えてくれなかったんですか?」
立て続けに質問をぶつけると、桐島さんは「まぁ落ち着け」と私の肩に手を置いた。