鬼部長に溺愛されてます
「今朝急に決まったことだったんだ」
「それなら移動中にメールだってできるじゃないですか」
いつも素っ気ない短文のメッセージなのだから、“これから本社にいく”とだけでもいいのに。
「そう拗ねるな。麻耶を驚かせようと思ったんだ」
「私はサプライズより桐島さんからの連絡がほしかったです」
これまでの半年間で会えたのは、七日にも満たない。それもほんの数時間の逢瀬だ。
だから会える時間は一分でも一秒でも無駄にしたくない。
「悪かった」
桐島さんが不意に引き寄せ、私はその胸に飛び込む格好になった。
強く抱きしめられ、棘だらけだった心が丸くなっていく。
しばらくそうして抱き合ってから、彼が私をそっと引き離す。私の顎に添えた指先に導かれるように顔を上げると、桐島さんの唇が私に重なった。
それだけで天にも昇るような気持ちになってしまう私は、なんて簡単な女なんだろう。