鬼部長に溺愛されてます

桐島さんが触れてくれただけで、寂しかった時間も不安に思ったこともすべてが嘘みたいに消えていく。
ここが会社だということをつい忘れて、桐島さんにしがみつくようにしてもっと先をねだるようにすると、私の期待に反して彼は私を引きはがした。


「続きはまた後だ。今日はこっちに泊まりだから」

「ほんとですか!?」


パッと顔を輝かせると、彼が目の端に笑みを浮かべて小さくうなずく。


「今夜はふたりでゆっくり過ごそう」

「はい!」


嬉しさに声が弾んでしまった。
時間を気にせずに桐島さんと一緒にいられるなんて夢みたい。


「その前に予定が入ってるから、そうだな……八時半にル・シェルブルのラウンジにしよう」

「以前、ふたりで飲んだお店ですか?」


友人の結婚式に出席していたという桐島さんとバッタリ会ったホテルだ。
そう尋ねた私に彼はうなずいた。


「それじゃ、後で」


桐島さんは私をもう一度抱きしめ、甘い余韻を残してミーティングルームを出ていった。

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