鬼部長に溺愛されてます
「ああ、大丈夫だ」
「でも、本当に無理しないでくださいね」
私が念押しすると、桐島さんは軽く笑って私を見た。
「麻耶のその言葉に何度も救われてきたよ」
「……はい?」
なんのことかと首を傾げて彼の顔を覗き込む。
「新入社員研修のときもそうだった」
「新入社員研修って、私の代のですか?」
聞き返すと、桐島さんはうなずいた。
「あの頃はまだマネジャーになって間もなくて、ましてや新入社員の受け入れを担当するのも初めて。毎日いっぱいいっぱいだったんだ」
窓の外に広がる夜景に目線を移し、桐島さんが思い返すようにポツリポツリと話し始める。
でも当時の私の目には、桐島さんはいつも余裕たっぷりに映っていて、そんなふうにはとても見えなかった。