鬼部長に溺愛されてます

自分を律しているような雰囲気をまとい、大人の優雅さというものを感じさせていた。
社会人とはこういう姿なのかと身の引き締まる思いがしたものだ。


「毎日、その日の研修が終わるときに研修日誌を書かせていたのを覚えているか?」

「はい。あれを書くのが正直苦手で……」


私がそう言うと、桐島さんが鼻を鳴らして笑う。
研修を受けた感想や、感銘を受けた講義に対する意見、それに対して自分は今後どうしていくべきかを一枚の用紙に書かされるのだ。


「研修を始めて三日後くらいからか。麻耶の日誌にはいつも同じような一文が添えられていたが、そのことは覚えているか?」

「……え? なんでしたっけ?」


自分で書いたことなのに、そう聞かれても思い出せない。


「俺の体調を気づかう一文だよ。“顔色が優れませんが無理はしていませんか?”とか“春先ですが今夜は少し冷えるそうなので、温かくしてくださいね”とか」

「あ……」


思わず口に手を当てる。

< 98 / 132 >

この作品をシェア

pagetop