確かにあたしは触れていた





「今度の土曜日なんだけどさ」

「うん?」

「映画、観に行こ」

「悪い…土曜、日曜と部活がある」

「……でた」



好き合っている恋人同士、土日は必ず一緒にいなければダメなんて法律やルールはない。

そんなことは分かっている。

頭で理解していても心が湿ってくるのは、青春真っ只中な筈の華の高校二年生のあたしは友達や周りのカップルとは違って、朝は手を繋いで一緒に登校とか、昼休みは一緒に屋上でご飯とか、放課後デートでクレープを食べたりとか、そういう経験が全くないからかもしれない。

制服が可愛いからと安易に家から少し遠い高校へ進学を一人で勝手に決めたあたしが、彼にそんな思いをぶつけるのはお門違いだろう。

だからこそ不満は塵も積もれば山となっているけで、泣くに泣けない泣き言を親友に愚痴っても不完全燃焼。



「試合が終わったら土日は休みだって」

「すまん」



彼の父は柔道の師範をしている。祖父の代から柔道教室を営んでいて、その一期生に私の父がいた。あたしたちはお互いがお腹の中にいた頃からの付き合いになるのだと何度も聞かされた話。
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