【完】姐さん!!
07 ◆ ヒーローの受難
◆
え?と。
顔を上げたなるみの頬に触れたくなって、でもその衝動をこらえて、薄く口角を上げる。笑えている自信はこれっぽっちもなかったけど。
「……俺嘘ついてんだよね」
「嘘?」
「なるみと一緒」
なるみが『もう恋愛感情で好きじゃない』と言ったとき。
本当に理解が追いつかなくて呆然とした。
「満月ちゃんのこと好きだけど。
それは小さい頃から世話になってるのと、兄貴の彼女だからって理由だけだよ」
言ってみれば姉みたいな人だった。
将来的に義理の姉になるんだから何も間違ってないけど、本当に、それ以上の目で見たことなんてない。
「……え」
「なるみが、兄貴のこと好きって言ったじゃん。
……そしたら俺いつか見放されんじゃないかなーと思って、嘘ついて、なるみと一緒にいた」
違うけど。
本当はどこか弱みにつけ込めないかなって、そんな最低なこと思ってたんだけど。
「なら……
満月ちゃんのこと、好きじゃないの?」
「恋愛感情じゃないよ」
「じゃ、じゃあ……
本命って言って、女の子と遊んでるのは?」
……ああ、バレた。
確かにそうだ。俺が満月ちゃんを好きじゃないんだとしたら、わざわざそんな嘘をついてまで女の子たちと遊ぶ必要なんてない。