【完】姐さん!!
「さすがに、気づいた……?」
「うん。でもわたしがこんなに仲良くしてるの衣沙だけだって知ってるでしょ?
流くんのことも好きだけど、いちばん仲良しなのはやっぱり衣沙だよ」
「……そっちかよ。全然気づいてねえじゃん」
「わたしが流くんと仲良くしてたからでしょ?」
「当たってんのに外れてるからすげえよ……」
ふっとため息をついて、衣沙が手を離す。
それでも近いままの距離で見つめられて、なぜか唐突に、キスされるんじゃないかと思った。
……いや、わたしの大きな勘違いだけど。
キスなんかされるわけないけど。
「……まあ、いいや。それでも。
とりあえず、俺の知らないとこで勝手に流兄とイチャついてたら許さねえから」
「……? はぁい」
「マジでわかってんのかな……」
ようやく距離を離して、「行こう」と促す衣沙。
それに頷けばぎゅっと手を握られて、今日はやけに甘えただなあ、なんて呑気に思っていたわたしは。
「……衣沙よりも俺の方がいいと思う」
「流、くん……?」
そのあとで。
衣沙との約束を破ってしまうことを、まだ知らずにいる。