【完】姐さん!!
09 ◆ お姫さまと王子さま
◆
「いさくん」
「ん~? どした~?」
膝の上に座っている舞ちゃんが、俺を振り返ってきゃっきゃとはしゃぐ。
かわいらしいその笑みに、思わず頬がゆるむ。なるみも俺も、子ども好きなんだよねえ。
……あ、べつに浮気じゃないからこれ。
断じて浮ついた気とかないから。さすがに10個以上年の離れた小さな女の子に恋愛感情とかないから。
「悪いな。
……もしかして今日、あいつと出掛けてた?」
舞ちゃんがどうしてもって泣きついてきたらしいから、約束したファミレス。
顔を合わせて「じゃあわたしはご飯行ってくるわ」と本当に声だけ掛けて帰ってしまったなるみ。
いまごろ流兄となるせとご飯中だろう。
……何が心配って、流兄に対するなるみの信頼の厚さだ。
「あいつと……っていうか。
なるみも一緒にいたけど、なるみの弟も一緒。なんなら俺の兄貴の親友も一緒にいたし別にいいよ」
これがなるみとふたりきりのデートなら即座に断ってたけど。
……っていうかデートしたいな、普通に。
女の子と遊ぶのやめたし、予定空いたし、デートする時間ならたっぷりある。
というかそろそろ本気で狙わねえと、次から次へと面倒なライバルばっかり出てくんだよな。
「なるちゃん弟いるんだねー」
俺らの共通の話題といえば、東西の話もしくは、こうやってなるみの話になる。
因縁があるって言われて関わらずに生きてきただけで、別に俺らに直接因縁があるわけじゃねえし。
関わんのは全然いいけど。
……なるみさん、仲良くなりすぎじゃない?
この間学校抜け出した時も、なぜか東の人間と一緒だったし。
冷静になるのに時間がかかって、あとで教室に行ったら「なるみ?教室なんて来てないけど?」って言われた時の俺の気持ちも考えてほしい。