【完】姐さん!!



衣沙が伸ばしてきた手が、髪に触れる。

それからおそろいのネックレスのチェーンに指を掛けたから、ネックレストップが持ち上げられる感触に、変に緊張した。



「……男と会ってた?」



「……、うん」



「……ふたりで?」



「……ふたりで」



「………」



嘘はついてない。嘘は。

だってニナくんは正真正銘男の人だし。まわりにたくさん人はいたけど、ふたりだったし。




「……わかった。

はあ。もういいよ、なるちゃん」



「え、」



なに。もういいってなに……?

たしかに衣沙に会いに来る前にニナくんと会ってたけど、やっぱり、いやだった……?



「なるみが言ってたように、付き合ってるフリすんのももうやめよ。

……さすがにちょっと疲れた」



わたしのと違って、牛乳が混ざったアイスミルクティー。

それを一口飲んだ衣沙は、ふっとため息を吐く。



「……色々考えたんだけどさ」



やめて。……言わないで。

それ以上、落ち込むようなこと、言わないで。



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