【完】姐さん!!
衣沙が相槌を打ってくれるから、ぽつぽつと話す。
わたしも最初は信じられなかったんだけど、さおは色々特殊だった。
「あのね、すごくわけのわかんないこと言うけど。
さお、実はちゃんと彼女がいたの」
「……はあ?
あいつなるみ相手に浮気してたのかよ?」
「や、ううん。そうじゃなくて。
その彼女がね、わたしも衣沙も知ってる子で」
名前を告げたら、衣沙が「ああ……」って納得したような顔をする。
それだけで何が言いたいのかわかったらしい。さすが衣沙。
「その子って、なるみのことすげえ慕ってた後輩だろ?
個人的になぜかファンクラブみたいなの発足してたな。強烈だったわ色々と」
そう。
わたしたちが卒業したあとにさおの彼女になったその子は、中学時代わたしのことをめちゃくちゃ慕ってくれていた女の子で。
「わたしが衣沙のことで悩んでるのを、さおから聞いて……
衣沙が行動を起こせるようにって、さおに協力するように言ったみたいで……」
「は……?
ならあの告白もキスマークの件も全部演技?」
「そういうことだったの。
本気で気づかなくて「ごめんなさい」ってふったら、そこでやっとネタバラシされた」
ちょっと本気にしたわたしが馬鹿みたいじゃないか。
っていうか、わたしのことを慕ってくれている彼女のためにそこまでやってみせるさおが凄いと思うけど。何度か本気でドキドキしたのに。
「どうりでぱったり来なくなったわけか。
じゃねえよ、ざっけんなあいつ……何ちゃっかりなるみにキスマークまでつけてんだよ……」
「あ、もちろん彼女の同意は得てるって」
「同意どうこうじゃなくて俺の気持ちの問題だから」