【完】姐さん!!
12 ◇ わすれられないキオク
◇
みんなの視線が、さおに集められる。
おそるおそる口を開いた彼が何を言うのかと思えば、はじめくんに向かって「お兄さんいますよね?」と一言。
……お兄さん?
「うん、いるよ」
「………」
「うちの兄が、どうかした?」
不思議そうに、首をかしげる彼はじめくん。
ごもっともな反応だと思う。お花見のときもはじめくんはいなかったし、そのあとわたしと衣沙がそれぞれファミレスで会っただけで、さおは彼のことを知らない。
つまり、初対面のはずだけど。
「俺も聞いた話で詳しく知らなくて、あくまで顔写真を見たことがあるってだけですけど……
姐さんのトラウマの件で、」
ドクッと、心臓が、大きく揺れる。
「姐さんにストーカーしてた"先輩"って、」
「っ、さお、もう言わなくていい」
とっさに出た声が大きくて、まわりのみんなが驚いたような顔をする。
特に衣沙の腕の中にいた舞ちゃんが、びくっと肩を跳ねさせたのを見た。
「言わなくていい……余計なこと言わないで」
さおの言葉の途中で、彼の言いたいことにはすぐに気づいた。
衣沙が未だに理解できないって顔をしてるけど、彼も言葉の意味はちゃんと理解してるはずだ。