【完】姐さん!!
13 ◆ 実はちょっと楽しみだった
◆
「お。なるみちゃーんっ、なるせくーんっ」
ひらひらと。
満面の笑みを浮かべた満月ちゃんが、こちらに歩み寄ってくるふたりに向かって手を振ってみせる。
……あんまり似てないから、美男美女のカップルみたいだな。
っていうか、素晴らしく絵になる姉弟。なるみの白いワンピースが夏の青空に映えて綺麗だ。
「満月ちゃん!
なにげに、会うのひさしぶりだよね?」
「そうだねー。おはよぉ」
駆け寄ってきたなるみと、笑顔で会話する満月ちゃん。
そのあと、なるせが連れてきた彼女と「はじめまして」の挨拶をするのを見ながら、俺もすぐそばにいるなるみに「おはよう」を言った。
──前に約束していた、夏休みのトリプルデート。
満月ちゃんと兄貴の仕事の関係で、結局、期間は見事にお盆休みとかぶった。
「おはよう、衣沙。
なるせの彼女、めちゃくちゃ可愛いでしょ?」
生徒会の副会長なんだって、と。
補足するなるみに、「へえ」とつぶやいて返す。
「……? なんか反応うすいね?」
「ここで俺が「え、そうなの?」とか食いついたら絶対なるみが妬くじゃん。
……あと、俺の中でいちばんかわいいのはなるみだから、可愛いとか言われてもわかんないよ」
一般的に見てかわいい女の子だな、とは思うけど。
俺の中で言ってしまえば、なるみが世界一かわいい。
「メイクしてきたんだ?」
チークとは別の意味で赤く色づいてるなるみの頬を、指で撫でる。
誕生日にリップグロスをプレゼントして、どうやら女心とやらに火をつけてしまったらしい。