【完】姐さん!!
14 ◇ そういえば忘れていたアレ
◇
「準備するからって強引に待たされたかと思ったら……
浴衣着てたんだね、3人とも」
「うん、花火あるって聞いたときから3人でおどろかせようって思ってて。
なるみちゃんもみいちゃんも、すごく可愛いでしょ?」
「うん。でも満月がいちばんかわいいよ」
……わたしから言わせれば、満月ちゃんと衣那くんも大概バカップルだと思うの。
10年以上付き合ってて間もなく結婚するんだから、幸せそうにしてもらわないと困るけど。
「みーも浴衣持ってきたの?
……俺なんも連絡してないけど」
「わたしが連絡したの。
満月ちゃんが2着持ってるらしいから、なかったときは最悪それ着ようって言ってたんだけど」
みいちゃんも浴衣を持っていたから、持参してくれた。
海から上がってシャワーを浴びると、交代でシャワーを浴びる衣沙に『ちょっと満月ちゃんたちの部屋行ってくるね』と言って部屋を抜け出し、女子3人で持ってきた浴衣を着た。
「よかったじゃん衣沙兄。
水着は仕方ないけど、浴衣は叶って」
「なるせうるさい。
……すげえ似合う。かわいいよなるみ」
「……あ、りがと」
最近思ったけど、衣沙は割とストレートに言葉を伝えてくれる。
たまに照れ隠しなのか誤魔化そうとしてるけど、基本的には思ったことを正直に言ってくれて。
「じゃあ、花火見に行こうか」
恥ずかしいけど、何よりうれしい。
大事にしてくれてるのが、すごくわかる。
衣那くんの言葉でホテルを出るとき、衣沙の手に軽く触れてみれば。
分かったように握ってくれて、わたしもそれを握り返した。