【完】姐さん!!



実際はそんな図々しいこと思えないけど。

わかりやすく話をそらして、透き通る身体が電飾で彩られたくらげの水槽に駆け寄る。ふわふわと優雅に泳ぐ姿は、とても綺麗で。



「ねえ、」



衣沙、と。

振り返ったら、彼がスマホをばっちりわたしに向けていた。……カメラ?



「ちょっ、と……盗撮しないでよ」



「後ろ姿だけだからいいだろ」



「……もう」



そういう問題じゃないのに。

悪びれる様子もない彼に眉間を寄せるけど、「デートの記念」なんて言われてしまったら、怒る気にもなれない。




「ばかなこと聞いてもいい?」



自然と絡められる指先。

合わせられた歩幅に、優しい笑み。



「わたしのどこを好きになってくれたの?」



「どこって……どこだろうな〜」



ハート型の泡を出すイルカには、ジンクスとやらがあるらしい。

それを一緒に見たカップルは、永遠に結ばれる、なんて。……あくまでジンクスだけど。



「なるみの、ぜんぶが好き」



そんなのがなくたって、ずっと一緒にいられる気がする。

衣沙の「好き」って言葉だけは、何よりも信じられる。



< 247 / 263 >

この作品をシェア

pagetop