【完】姐さん!!
実際はそんな図々しいこと思えないけど。
わかりやすく話をそらして、透き通る身体が電飾で彩られたくらげの水槽に駆け寄る。ふわふわと優雅に泳ぐ姿は、とても綺麗で。
「ねえ、」
衣沙、と。
振り返ったら、彼がスマホをばっちりわたしに向けていた。……カメラ?
「ちょっ、と……盗撮しないでよ」
「後ろ姿だけだからいいだろ」
「……もう」
そういう問題じゃないのに。
悪びれる様子もない彼に眉間を寄せるけど、「デートの記念」なんて言われてしまったら、怒る気にもなれない。
「ばかなこと聞いてもいい?」
自然と絡められる指先。
合わせられた歩幅に、優しい笑み。
「わたしのどこを好きになってくれたの?」
「どこって……どこだろうな〜」
ハート型の泡を出すイルカには、ジンクスとやらがあるらしい。
それを一緒に見たカップルは、永遠に結ばれる、なんて。……あくまでジンクスだけど。
「なるみの、ぜんぶが好き」
そんなのがなくたって、ずっと一緒にいられる気がする。
衣沙の「好き」って言葉だけは、何よりも信じられる。