【完】姐さん!!
「……分かってくれてるよ。
だから俺、なるみにすげえ愛されててしあわせだって思ってんだもん」
「……ほんとに?」
「ほんと。
当たり前のように分かってくれてるから、なるみが気づいてないだけ。前にさ、1回女の子が霧夏の教室に入ってきたの覚えてる?」
「あ、うん。そんなこともあったわね」
そういえばあの子、大丈夫だろうか。
衣沙がめずらしく怒ったし、わざとらしく見せつけるような態度までとってたけど。
「あのとき、俺が何やっても怒んないとこがなるみのいいところだって言ったじゃん。
……アレさ、当たり前にできることじゃないと思うんだよねえ」
あのときはまだ、衣沙は女の子と遊んでいて。
衣沙は満月ちゃんのことが好きなんだって思ってたから、良くも悪くも関心を持たないようにしていただけなんだけど。
「しかも、俺をなんとも思ってないならまだしも。
……俺のこと好きでいてくれたわけだから、俺よく嫌われてなかったなって思うし」
「……まあ、遊んでたのは最低よね」
「ごめん。……俺の勘違いで遊んでただけだから、本当にそれは悪いって思ってる」
本当に怒ってるわけじゃないのに、この話題になるたびに本気で謝ってくる衣沙。
むしろ気にしてるのは、わたしよりも衣沙の方だ。
自分の勘違いで、女の子とたくさん関係を持ってしまったこと。
……衣沙の中できっと、許せない部分があるんだろう。
「あ、衣沙……!
ねえ見て、ハート型ってあれじゃない?」
それは別にわたしが口出しすることでもないし。
衣沙の中で、すこしずつ消化していってくれればいい。