【完】姐さん!!
「嫌だった?」
「ううん、行きたい」
「ならよかった。
それまで……あ、本屋でも寄り道する?」
道の先に見つけた本屋さんを、衣沙が指差して聞いてくれる。
たぶん買ってる漫画の最新刊とか、出てると思うけど。……すごく続き、気になる、けど。
「ううん、少女漫画はしばらくいいの」
「ん? なんかあった?」
顔を覗き込んでくる衣沙。
衣沙も大概、わたしとの距離感を間違えてると思う。……わざわざ綺麗な顔を見せつけてくるなんて、新種の嫌味としか思えない。
「漫画に使ってたお金で、おしゃれしようかなって。
……衣沙の前で、ちゃんと可愛くしてたいの」
「……もう十分かわいいのに」
「そう言ってくれるのはうれしいけど……
衣沙の幼なじみとしてじゃなくて、彼女として一緒にいたいから」
頑張りたいの、って。
言えば衣沙は、まぶしそうに目をほそめる。
「わかった。……応援してる。
でもその代わり、可愛くなった姿は、俺にいちばんに見せて。ほかのヤツに見せたら、妬くよ?」
「……やきもち妬いてほしいから、
わざとほかの誰かに先に見せてもいい?」
「おま、それは反則すぎじゃん……」