【完】姐さん!!
困ったように微笑む彼。
……その頼りない表情も好きだって思うくらいには、わたしだってベタ惚れだ。
「衣沙」
「ん?」
「だいすき」
「ん、俺も」
顔を見合わせて、くすくすと笑う。
本当はね、デートなんてしなくても、一緒にいられたらそれでいいの。
だけど今までのわたしたちとは違って、恋人、だから。
……まだその響きがなんだかくすぐったいし、慣れないけど。
「ここ、こんな感じになってたんだ……
家からそんなに遠くないから、逆に来ないよね」
「そうだねえ。
でもまあ、いちゃつくにはちょうどいいな」
衣沙が「デートしよう」って言ってくれるなら、わたしは素直にうなずこうと思う。
きっとわたしよりも衣沙の方が、ロマンチストだ。
「はあー……こうやってんの、すげえ落ち着く」
近くをぷらぷらとふたりで歩いて、他愛もない話をして時間を潰して。
何時間話してたって話題がまったく尽きないのは、わたしたちの関係性ならではだと思う。
それから向かった先は、衣沙が言っていた夜景を見られる展望台。
うしろからぎゅうっと抱きしめるようにして耳元で囁かれたら、ものすごくはずかしいのに、心臓は心地良いリズムを刻み出す。
うん。……落ち着く。