【完】姐さん!!



困ったように微笑む彼。

……その頼りない表情も好きだって思うくらいには、わたしだってベタ惚れだ。



「衣沙」



「ん?」



「だいすき」



「ん、俺も」



顔を見合わせて、くすくすと笑う。

本当はね、デートなんてしなくても、一緒にいられたらそれでいいの。



だけど今までのわたしたちとは違って、恋人、だから。

……まだその響きがなんだかくすぐったいし、慣れないけど。




「ここ、こんな感じになってたんだ……

家からそんなに遠くないから、逆に来ないよね」



「そうだねえ。

でもまあ、いちゃつくにはちょうどいいな」



衣沙が「デートしよう」って言ってくれるなら、わたしは素直にうなずこうと思う。

きっとわたしよりも衣沙の方が、ロマンチストだ。



「はあー……こうやってんの、すげえ落ち着く」



近くをぷらぷらとふたりで歩いて、他愛もない話をして時間を潰して。

何時間話してたって話題がまったく尽きないのは、わたしたちの関係性ならではだと思う。



それから向かった先は、衣沙が言っていた夜景を見られる展望台。

うしろからぎゅうっと抱きしめるようにして耳元で囁かれたら、ものすごくはずかしいのに、心臓は心地良いリズムを刻み出す。



うん。……落ち着く。



< 254 / 263 >

この作品をシェア

pagetop