【完】姐さん!!
「すぐそこに人いるから……」
「なに言ってんだよ。
……みんな、自分たちの世界だって」
たしかにまわりはカップルだらけで、自分たちの世界に浸ってる。
人目を気にしてる様子なんてないし、わたしが思わず妬いちゃうくらいにかっこいい彼氏のことも、誰も見てない。
「………」
ならもういいや、って。
潔く開き直って、腕の中でじっとする。
「……俺さ。
なるみとこうやって付き合って、ひとつだけ、後悔してることあるんだよね」
耳元で。
囁かれる声はいつもみたいに甘いのに、紡がれたそれに、表情がかたくなる。
……後悔、してる、こと?
「ああ、ごめん、悪いことじゃない。
……俺の言い方が悪かった。なるみに対して後悔してるわけじゃないよ」
「……うん」
「あのとき……
俺、なるみのこと引き止めんのに必死だったからさ。ちゃんと言ってなかったなって」
あのときって、いつの話?
そう聞こうしたら、衣沙がわたしの身体を反転させて、向かい合うかたちになる。
「……ずっと好きだったよ、なるみ。
だから、俺の彼女になってください」
「あ……」