【完】姐さん!!
05 ◆ 恋愛初心者だったりする
◆
『ちょっと、だけ……こうしてて……』
甘えるように、放たれた言葉と。
胸にうずめられた顔に、どくんと心臓が鳴って。……途端に鼓動が乱れたのを、なるみに知られないように、必死だった。
「あー……もう、マジでなんなんだよ……」
「ひさしぶりに顔を合わせた兄貴に文句?」
「……べつに兄貴に言ったんじゃないから」
「うん、なるちゃんのことでしょ?」
にっこり。
笑ってみせる兄貴のことは嫌いじゃないけど、なるみが兄貴のことを好きだって思うたびに、なんとも言えない気分になる。
「何かあったの?」
「……ってか、なんでいんの?
満月ちゃんそろそろ帰ってくんだろ?」
「満月なら今日は大学の友だちの家。
宅飲みして泊まるから俺は実家に泊まるんだよ」
「俺の質問が悪かった。
……なんで、俺の部屋にいんの?」
隣に自分の部屋あるじゃん。
とっくに家出てるから部屋は使ってないけど、そのままにしてあんじゃん。母さんちゃんと掃除してくれてんだから、いつでも万全に使えんじゃん。
もっかい言う。……なんでいんの?
「たまにはかわいい弟の悩みを、
優しいお兄ちゃんが聞いてあげようかなって」