【完】姐さん!!
「……なるみ、」
「お邪魔します」
何か言おうとしたのか、衣沙がわたしを呼んだ。
そのタイミングでガラッと開いた扉に、わたしも衣沙も思わずおどろいた。……というのも、この部屋は『霧夏の部屋』と言っているのに、使っているのはトップと、トップの仲良しの相手だけで。
断じて入ってきてはいけないというルールがあるわけではないのだが、基本的に誰もこない。
だからわたしと衣沙がふたりで使っている状態だった。
「さお……」
そんな場所に、本日ふたりめの来客。
顔をのぞかせたさおを見て、衣沙は「まじで邪魔しにくんなよ」と口の悪さを発揮する。
彼のさお嫌いは一体なんなんだ。
「どうかしたの? さお」
「どうもしてないですよ?
ただ、今日も一緒にお昼どうかな、と」
「ごめん衣沙が昨日さおとお昼食べたことに拗ねてるから、今日は衣沙と約束しちゃった。
……ねえそれよりいま授業中だって知ってる?」
堂々とサボってるわたしが言えたことじゃないけど。
入学してから幾度となくこの部屋でサボってきたわたしが、「1年生なんだからちゃんとしなさい」なんて言ったところで何の説得力もないけど。
「……衣沙さんこそ邪魔してるじゃないですか」
「俺となるみは付き合ってんの。
本当はそうじゃなくてもまわりにそう思い込ませてんだから、ややこしいことすんなよ」
「ややこしいことなんてしてませんよ。
姐さんのことが好きだから、理にかなった行動をしてるだけです」