【完】姐さん!!
いくら好きな人じゃなくとも、嫌悪感を抱くことのない相手に真正面から「好き」と言われればドキッとするもので。
その表情を見逃さなかったらしい衣沙は、チッと舌打ちした。……機嫌悪いな。
「そういえば1年の間で、姐さんと衣沙さんが喧嘩したって噂になってましたよ?
まあ、原因は俺だと思いますけど」
「……やたら1年の女子に絡まれると思ったらそういうことかよ。
っていうか言ってんじゃん。お前には絶対渡さないし、なるみのこと誰かに譲るつもりもないって」
どくん、と、心臓が鳴る。
さおみたいに好きだと言われたわけでもなければ、そこに存在する感情は、恋なんて甘いものでもない。……なのに、衣沙だけが。
「略奪するって、言いましたよね?」
わたしのことを、一喜一憂させる。
みっともないほど簡単に、揺れてしまう。
ねえ。……どうしたら、振り向いてくれるの?
「ああ、そうだ。
衣沙さんに言わなきゃいけないことがあって」
「……言わなきゃいけないこと?」
くすりと、さおが笑ってみせる。
その笑みに、とんでもなく嫌な予感がした。
「はい。
姐さんはきっと、黙ってるはずですからね」
「っ、ねえ、さお」
──なにを、言う気でいるの。
さっきとは違う理由ではやくなる鼓動をおさえるようにぎゅっと胸元を握って尋ねるよりもはやく。さおは、目線だけで衣沙を挑発して。
「衣沙さんがなんて言おうと、
本気で狙おうと思えば、いくらでも奪えます」