【完】姐さん!!
「ツキ。……5秒だけやるから部屋出てけ」
「ずいぶん横暴ですね」
「じゃないと俺、お前のこと殴る」
「殴られたら、姐さんのこと譲ってくれます?」
わたしを見るさおに、首を横に振る。
「いまは出ていって」という意味を込めて彼に視線を返せば、さおは「昼は諦めます」とだけ言って、あっさり部屋を出ていってくれた。
取り残されたのは、静寂と、衣沙と、わたし。
衣沙の機嫌がとんでもなく悪いからとりあえず出ていってもらったけど、ふたりきりも気まずい。
沈黙が怖くて無意味に指を見つめてたら、衣沙のため息が耳に届いた。
「……なんでそんな無防備なの、お前」
「………」
「なるみ見てたら、たまにすっげえ腹立つ」
「………」
目も合わなければ、吐き出される言葉は冷たい。
腹が立つということは、わたしが無意識のうちに何かしてしまっているんだろう。
「なんでほかの男に触らせんの?
兄貴のこと好きなら、それで、」
──ほら、何も、わかってない。
幼なじみなんて、腐れ縁なんて、どうでもいい。