【完】姐さん!!



なにを言われたのかわからなかった。

ただ言葉の意味を深く考えた時にはもう、すぐそばまで綺麗な顔が迫っていて。



「や、っ……」



くちびるをかすめた彼の吐息に、思わずくっと顔をそらした。

嫌だ。たとえ相手が衣沙でも、こんなの、絶対嫌。……むなしいだけのキスは、したくない。



「……っ、もうやめよう?」



顔を上げれば、衣沙と目が合う。

その瞳はわたしの今の言葉の意味を探ろうと、不安定に揺らめいていた。……もう、むりだ。



「もう、この関係やめよう……?

慰め合うだけなんて、結局なんの意味もない」



心の底から祝ってあげたい。

だからもう、衣沙とのこの関係も、いらない。




「なんでいまさら、」



「嘘なの」



「……うそ?」



ずっとずっと衣沙のことが好きだから。

バレたくなくてこの関係に落ち着こうとした自分が悪かった。……慰め合うなんて名目で、キスされるような関係になりたいわけじゃなかった。



「っ、衣那くんのこと好きだけど……!

もうとっくに恋愛感情なんて無いから!」



「は……?」



今度こそ腕を振り払って、おどろきを隠しきれてない衣沙を見下ろす。

一緒にお昼を過ごすつもりでいたけど、このままふたりきりでいるなんて無理。



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