【完】姐さん!!
「あ、はい……ひとり、です」
「彼氏に怒られねーの?」
「彼氏……? ああ、衣沙……」
別に彼氏でもなんでもないんだけど、話すと長いし面倒だ。
しかも現在逃げ出してきたからこその絶賛気まずいキャンペーン中なので、その話題は避けたい。
「つーか、制服で堂々サボり?」
「高校によっては学校が終わるの早い日だってあるし、別にめずらしくないかなって……」
「まーな。それよりいま暇?
飯買いに来たんだけど、何も用事ねーならこのまま一緒に飯行かね?」
……え? このタイミングで?
一応東と西に色々あるんじゃないの?これってあっさりついていって大丈夫なの?
「俺に手出されるとか思ってる?」
「っ、お、思ってません……!」
しかも考えてたのは東と西のことであって男女関係うんぬんじゃないし……!
誤解されるのが嫌で勢いよく否定したけど、彼はけらけらと笑うだけ。なんとなく癪だ。
「んじゃ、緋雨も誘って飯行こうぜ。
……そんな浮かない顔した女、さすがに放っておけねーだろ?」
「え……」
にっこり、彼がそう告げる。
舞ちゃんのことといい、今といい。彼は案外面倒見が良い人なのかもしれないと、薄ら思った。