【完】姐さん!!
「あー……会いたくない……」
会ったらなんて言われるのか、わからなくて怖い。
わたしは衣那くんを好きで、衣沙は満月ちゃんのことが好き。だから許された関係で、慰め合うなんていう名目があったのに。
……それがなくなったら、もう、衣沙はそばにいてくれないかもしれない。
だってわたしを本命にしておく理由がなくなったから。慰め合えないなら、そんなの。
「……悩むことなんて別にないでしょ」
ぽつり。
言葉を落としたのは五月雨 真智(さみだれ まち)くん。無口だけど口を開いたら毒舌なんだよ、と、さっき懍くんが言っていた。
「好きなら好きでいいじゃん。
両想いになりたいとか、付き合いたいとか、そういうの結局自分勝手な自己満足だよ」
でも真智くんの発言は間違ってないんだよ、とも。
……たしかに、言ってることは正しい。
「相手に感情押し付けたってどうしようもないでしょ。
どうせ赤の他人でしかないんだから」
「………」
「お互いに叶わないから慰め合うっていう関係を選んだのも自分でしょ?
人間はその先なんて考えてるフリして結局目先の幸せしか考えてないからそうなるんだよ」
「真智、言い過ぎ……」
その通りだ。
そうやって衣沙のそばにいて、衣沙の秘密を自分だけが知っているような気分になって、衣沙の本命なんて嘘で、そばにいてもらって。
それだけで十分すぎるほど大事にしてもらった。
好きになってもらおうなんておこがましい。
いつまで衣沙に甘えているんだろう。
喧嘩した時に先に折れてくれるのも、いつも衣沙だった。歩み寄ろうとしてくれていたのは、衣沙で。