風の歌
「なかなか見つからないな」
黒服の人達は作業を続けている。
「…!」
黒服の‥校長に向かって舌打ちをした男は手を止め、歩いて来る海里を見た。
「もしかして、あいつなのか?」
「どうした?何があいつなんだ?」
もう1人の男も手を止める。
「…あの娘は?」
海里がその場に近付くと、先生が駆け寄って来た。
「こら、ここに近付いてはいかん!!」
「早く離れなさい!」
「…」
先生を見つめる海里。
「桃原!話を聞いているのか!?早く離れなさい!」
「…先生、私は呼ばれているんです。どいて下さい」
「何を言ってるの?」
先生達から変な目で見られる。
「………なるほどな。わかったぜ」
「何がだ?」
黒服の男は海里を指差した。
「いくら掘っても「あれ」が見つからない理由」
「…あの娘が何かあるのか?」
「ああ」
頷き、男は海里に向かって歩き出した。
「あんたら、そいつを通してくれないか?」
驚く先生達。
「ですが、部外者は通してはならないと…」
「部外者…?そいつは部外者じゃあねぇぜ」
「…はい?」
「来い」
腕を掴み、海里を連れて行った。
「どうなってるんだ?」
その場にいた人は、全員ざわつき始める。
「海里…」
陸も風歌も不安そうに海里を目で追う。
「皆、よけろ」
「おい…?」
無理やり作業をしていた人達を押し退ける男。
「ほら、ここだぜ」
海里を、ちょうど穴を掘っていた場所の前に立たせた。
「…え」
男を見る海里。
「呼ばれてるんだろ?…早くそこから出してやれ」
「……うん」
目を閉じる。
穴にむかって両手をかざす。
『――目覚めよ白銀の光…目覚めよ漆黒の闇……我は汝の共鳴者なり―――』
穴があった場所が、白と黒に輝く螺旋の光に包まれだした。
「これは…!!星、まさかこの娘は……!?」
「…そうだ」