風の歌
陸は部屋に入り、海里が座っているベッドに腰掛けた。
「…………」
しばし沈黙。
海里は何だか気まずいと思ったので何か喋ろうと思ったが、先に口を開いたのは陸の方だった。
「あんま気にするなよ?」
「‥へ?」
突然の言葉に驚く。
気にするなって…何を?
「孤児院のこと」
反応し、陸をみる。
「自分が皆に負担かけてんじゃないかって思ってんだろ」
「…」
図星だ。
「母さんな、海里がいつも家事とか手伝ってくれて助かるって言ってるぜ」
「…」
「父さんも、海里が作ってくれるお弁当はいつも美味しいって、喜んでる」
「……でもそれは些細なことでしょ?私、小さなことしか手伝うことができない…お世話になってるのに」
落ち込む。
「何言ってんだよ。海里は十分、皆の役にたってるよ」
ぽんっと海里の頭を叩く。
「どこが…?」
「笑顔」
「えがお?」
それのどこが皆の役にたつの?