切ない春も、君となら。
駅を出て、十五分位歩いた。


「到着」


近田君がそう言って足を止めた。


そこは普通の一軒家で。



「ここは?」

「俺の家」

「へえ、俺のい……え⁉︎」


ち、近田君の家⁉︎ ど、どうしてそこに私を⁉︎


「い、家の人は⁉︎」

そう聞くと、「いるよ」と答えられる。

そうかー。二人きりじゃないなら良かったー……って、駄目じゃない⁉︎ 私、金髪だよ⁉︎ 見た目だけなら超不良だよ⁉︎


……莉菜達とのことを近田君に相談してから、気持ちはとてもスッキリしたけど、全てが解決した訳じゃないから、私はまだ、金髪を黒髪に戻せずにいた。


こんな派手な外見の女が突然押し掛けたら、近田君のご家族は相当驚いてしまうのでは⁉︎


だけど近田君はすたすたと歩いて、家の玄関の大きな戸をガラガラとスライドさせる。


「ただいまー」

彼はそう言いながら靴を脱ぐ。

私にも、靴を脱いでついてくるようにと彼が言ったので、その通りにした。


築は古そうだけど、大きくて広くて立派なお家だ。


彼が向かったのは、この家の居間と思われる一室。


「ばあちゃん、ただいま。友達つれてきた」


そこにいたのは、部屋の真ん中に置かれたテーブルの横にちょこんと座った、おばあちゃん。


「あらあら、まあ。初めまして、総介の祖母です」

近田君のおばあちゃんは、そう言いながら立ち上がり、挨拶してくれた。

私も、ばっと頭を下げて初めましての挨拶を返す。


「あらあら。総介がいつも話してくる通り、真面目で礼儀正しい子ねぇ」

近田君のおばあちゃんは私に対してそう言ってくれる。

近田君、家でおばあちゃんに私の話なんてしてるの?

不思議に思って彼の方を見れば、目が合ったのにぱっと逸らされてしまった。

それは、いつもの照れ隠しの仕草?

一体いつも、私のどんな話をしているんだろう。
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