切ない春も、君となら。

ドォン、ドォン……と無数の花火が夜空に咲き誇る。


私達はそれを、花火大会のメインステージから離れた、会場内の小さな公園で見ていた。


「ここからだとちょっと見えにくいな」

ベンチの隣に座っている近田君の言う通り、木々が邪魔していまいち見えにくい。
メインステージ付近から見た方が、花火を遮るものはないし、大きく見えるのだろう。


でも。


「ここでいいよ」


ううん、ここが良かった。

近田君と二人きり。辺りに人の気配すらない。

私はここがいい。

心臓がドキドキしちゃって、隣にいる近田君にまで聞こえるんじゃないかって不安になる。大丈夫。花火の音が大きいから。



「悪かったな、急に抜け出そう、なんて言って」

花火を見上げていた視線を私に向けて、近田君がそう言った。


「ううん、大丈夫だよ」

寧ろ嬉しかったよ、と言ってしまいたい。


というか、よく考えたらこの状況って、絶好の告白するチャンスなんじゃないのかな。


……でも、無理! まだそんな勇気ないよー!



すると、近田君が。


「そう言えば前にさ、竹入は黒髪の方が似合うと思うって言ったじゃん」

「え? ああ、うん……」

それはよく覚えているけど、突然何だろう。


いつもは至近距離で見つめ合うと逸らされがちな彼の瞳。
でも今は、私のことをちゃんと見てくれている。

本当は照れているのかもしれない。
だって何だか、少し気恥ずかしそうな顔。
でも、それでいてどこかおかしそうに笑って。

そして。


「その考えは今も変わってないけど……

でも、こうして見ると金髪も悪くないよな」

「え?」

「花火が上がる度に、金髪が花火にチラチラ照らされて、何だか綺麗だな、なんて」


胸がきゅぅっと締め付けられた。


その笑顔にも、言葉にも。


彼にとっては何となく発した言葉にすぎないのかもしれない。二人きりの、どこか気まずい空気を打破するために適当に言っただけかもしれない。

だけど。


私自身が嫌っている、この金髪を。
そんな風に言ってもらえたら。



たとえ金髪でも。

私の全部を受け入れてもらえた様な気になってしまって。


分かってる。きっと自惚れ。


だけどーー




「……好き」
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