切ない春も、君となら。
大きな花火が、また打ち上がる。

赤、黄、緑と。色んな色のそれが連続で空に咲く。


夢、じゃないよね? 私、私……



「私、近田君の彼女になれる?」


守ってあげたい、とは言ってもらえたけど、決定的なことは言われていないから、つい、彼からと返事を急かすような言葉を発してしまった。


彼は、〝うん〟とも〝違う〟とも言わなかった。


だけど。


「……その〝近田君〟ってやめない? ……付き合ってる感じしないから」

と言ってくれて。


それって、それって。


「ねえ、もっと分かりやすく言ってほしいな! 私のこと、どう思ってるっ?」

私の想いが届いたことが。そして、おそらくだけど彼も私と同じ気持ちでいてくれたということが何より嬉しくて。つい、ちょっと調子に乗って身を乗り出して彼にそんなことを言ってしまう。


「うるせえ。もうそろそろ皆の所戻るぞ」

「えっ」

ひ、酷い。好きって聞きたかったのに、うるさいとか。

でも確かに、そろそろ皆の所へ行かなきゃ。いつまでも二人で姿を消してる訳にはいかないよね。


でも、その前に。


「……じゃあ近田君のこと、名前で呼んでもいい?」

そう尋ねると、彼は「いいよ」と答えてくれるけど。


「何て呼べばいい?」

「竹入の好きな様に呼べばいい」

「ちょっ、私のことは名字呼びなの⁉︎」

納得いかない! 私のことも春日って呼んでください! と彼に言うと。


「いや、だってさ。春日って呼ぶと、基紀と被るだろ」

「被ってもいいじゃない」

「やだ」

何だろう、そのこだわり。男の子って分からない。


すると不意打ちで、


「……春」


って、小さく言われた。
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