切ない春も、君となら。


「あ」

はるはるとチカオがいなくなっと思ったら、基紀となーちゃんまでいない。



……基紀が、私に何も言わずにどこか行ってしまうなんて、今まで一度もなかったのに。



「なあ、基紀と松岡さんは?」

私の隣から、ほりぃがそう聞いてくる。
聞かれたって、私だって知らない。
イラッとしながら「告白でもしてるんじゃないの」と適当に答えた。


「こ、告白⁉︎」

私の適当な返事に、ほりぃが花火にも負けないくらいの大きな声を出す。


「近田と竹入さんはそうかもって思ってたけど……基紀と松岡さんも⁉︎ あの二人もそういう関係⁉︎ ど、どっちがどっちに告白⁉︎」

「知らないよ! 適当に言っただけだし!」

何、ほりぃのこの反応。そう言えばほりぃって、なーちゃんと話す時いつもやたら照れてたっけ。


「ていうか、基紀は絶対に伊川さんだと思ってたのに……!」

「え?」

「伊川さんだって、基紀が好きだったんじゃないの⁉︎ よし、今から俺達で追い掛けようよ! まだ間に合うかも!」

そう言ってほりぃが私の右手を掴んで走り出そうとする。


けど。

「やめてよっ!」

私はほりぃの手を振り払って、睨み付ける。


「伊川さん?」

「ほりぃは、自分がなーちゃんのところに行きたいだけでしょ? じゃあ一人で行ってよ! 杏は、あの二人が何話してたってどうでもいいし!」

ムキになってそう言うと「……伊川さんは、本当に基紀のこと好きじゃないの?」とさっきと同じ質問をされる。

……何なの。

わざわざそんなこと言われたくない。

だって。
だって杏と基紀はーー。
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