切ない春も、君となら。
「……ごめん」

と、ほりぃが謝ってくれた。


……こうやって謝ってくれた人、初めてかもしれない。


「俺にそんなこと言われたって腹立つだけだよな。自分のこと棚に上げてるよな、俺」

そう言うほりぃの声は、段々と弱々しくなってく。



「……失恋したんだね、杏もほりぃも」


そうやって口にすることで、私は自分が失恋した事実を、初めて自分自身で認めた。



「切ないよな」

ふぅ、と溜め息を吐きながらほりぃが言う。


うん、切ない。失恋ってこんなに切ないんだ。


だけど、すぐ隣でこの気持ちを共感してくれる人がいるのが嬉しい。


「ねえ、ほりぃ。どうやったらこの切なさを忘れられるのかな」

そう聞くと、ほりぃはちょっと困った様な顔をして。


「うーん。無理に忘れなくてもいいと思うけど。あえて言うなら、気持ちを溜め込まずに吐き出すこと? それで、誰かに共感してもらうことかな?」


気持ちを吐き出して、共感してもらう、か……。
確かにそうかも。現に今も、切ない気持ちをほりぃが共感してくれるからまだ落ち着いていられる。


ってことは。


「そうか。杏はほりぃと付き合えばいいんだ」


そう呟くと、隣でほりぃが「はい⁉︎」と大袈裟なくらいに驚く。


「えー。杏、そんなに変なこと言った?」

「言ったよ。何でそうなるのさ。落ち着けよ」

落ち着いてるよ。ほりぃが落ち着けよ。そんなに動揺しなくてもいいじゃん。


「だってさ、杏とほりぃなら、お互いの切ない気持ちを間違いなく共感し合えるじゃん。遠慮せずに吐き出せそうだし」

「それはそうかもしれないけど、それで何で俺達が付き合うことになるの」

「恋人同士なら誰よりも遠慮せずに話せそうだし、お互いに傷を埋め合うのにちょうどいいと思って」

「筋は通ってるけど、うん、ない。俺達が付き合うっていうのはないな」
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