切ない春も、君となら。
教室にいると、辛すぎる。
ぽっかり空いた隣の席。
いつもの皆で集まっても、一人足りない。
新学期になったら、
春って。たくさん呼んでもらいたかったのに。
いつも〝おい〟とか〝お前〟って呼んでくるからさ。まだ全然、名前呼ばれてないんだよ。
新学期が始まって一週間が経った。
悲しい気持ちは日に日に増していって、私は遂に、朝から学校に行くのをサボった。
親にバレる訳にはいかないから制服で家を出て、自分で学校に欠席の連絡をした。
でも、制服で街をうろうろする訳にもいかない。着替えを持ってくるんだった。サボりなれてないなぁ。
図書館でも行こうかな。それなら制服でも変な目で見られないかも……。
だけど街中にある図書館に行く為には、本屋やゲームセンターや立ち並ぶ大通りを通る必要がある。
平日とはいえ、それなりに人は行き交っている。
補導されたらどうしよう、なんてビクビクしてしまう。
すると、歩道のガードレールに寄りかかるように立つ男性と、その男性と抱き合ってる女の子がいた。
人目を気にせずキスを交わしているそのカップルは……男性は知らない人だったけど、女の子の方はよく知っている人物だった。
「あ、春日?」
私に気付き、男性と抱き合ったままこちらに手を振るのは、莉菜だった。